日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その17)

冨田鋼一郎

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

85歳当時の2000年からいくつか 

○ 一夜さに熟睡九時間目覚めよきは
  八十五歳わが快挙とも
     (1995.3)

○ 「椿」
 咲き初めしと思う間もなく散り落ちし
  椿の花の崩れもあらず
     (1995.4)

○ 「老い」
 汝とわれと共々老いてこの先は
  かたみにいたわりいたわられつつ
     (1995.4)

○ 「老い」
 大病はせずとも老いは既にして
  心平らかに日々をあかるく
     (1995.4)

○ 「根津神社」
 赤き鳥居連なり立てる参道を
  人に揉まれて神社に詣ず
     (1995.5)

○ 「庭の花々」
 坪ほどの池に入れたる鉢植えの
  菖蒲の紫蕾持ちたり
     (1995.6)

○ 「夏の回想」
 俘虜の目に痛々しきまでに美しかり
  ブーゲンビリア見れば偲ばる
     (1995.8)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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