ムラサキハナナ
冨田鋼一郎
有秋小春
どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる
2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)
びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか
毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き
84歳当時の1999年からいくつか
○ わかちやる林檎を待ちてひよどりの
われの朝餉を覗きつつ待つ
(1999.1)
○ 「日溜り」
芽吹きには未だ早けれど裸木の
柿ゆったりと朝の日を浴ぶ
(1999.2)
○ 「谷中せんべい」今は未婚の三代目
わが馴染みきて六十年経つ
(1999.3)
○ 林檎やる妻を待つらしひよどりの
いつもの二羽の窓越しに見ゆ
(1999.4)
○ 鉢の百合咲けば偲ばる敗走の
ルソンの山百合今も咲けるや
(1999.6)