読書逍遥

読書逍遥第356回『言葉の海へ』(その1) 高田宏著

冨田鋼一郎

『言葉の海へ』(その1)

⭕️敷島ややまと言葉の海にして
  拾ひし玉はみがかれにけり
         後京極

仙台藩大槻家三代にわたる激動の幕末維新期の知的冒険記

藩とか幕府を越える「日本」の国家意識の芽生え
西洋を学ぶことは、ただ西洋を知ることでなく、西洋から自らを区別すること

①大槻「玄沢」(1757-1827) 号・磐水
 蘭学を根付かせた
 杉田玄白と前野良沢から名前をもらった
②大槻「磐渓」(1801-1878)
 開国論を唱えた
③大槻「文彦」(1847-1928)
 日本辞書の編纂

明治24年の大津事件は、政府高官の胸にも国民の心にも、条約改正問題と結びついて、色濃く焼き付けられた。
国際社会でのこの国の不安定な立場があまりにも鮮やかだった。

大槻文彦の『言海』が完成したのは、こういう時だった。文彦の使命感と自負とが、この「時」と深く関わっている。

この国が半国家であることの悲しみが、大槻文彦という人間と『言海』という辞書との根にある。

学問によって世界と素肌で触れてはいたが、「藩」と呼ぶ国と「日本」と呼ぶ国とが文彦のなかで交錯する。二つの国をどう重ねていけばいいのか

明治初期の課題が「近代国家建設」だとすれば、令和のいまの課題はいったい何と表現すればいいのか

歴史から学ぶ姿勢を大切にしたい

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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