読書逍遥

読書逍遥第354回『あらためて教養とは』(その1) 2004 村上陽一郎著

冨田鋼一郎

『あらためて教養とは』(その1) 2004 村上陽一郎著

村上 陽一郎(1935- )
日本の科学史家・科学哲学者。

だいぶ前、軽井沢夏季大学で村上先生の話を聴いたことがある
今89歳 ご健在だろうか

ありがたい本に出会ったと感じた本だった
改めてページを繰ってみる

人間が作られる過程での書物の役割の重要さについて、著者は、漱石と宮沢賢治の読書体験を語っている

自分の肥やしとなるように、引きつけて読むということ

この見方に随分と影響を受けた

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「私を造った書物たち」

漱石の小説は、ほとんどとっかえひっかえ、自分の人生の中で何度でも読んできました。

漱石の描く人間といっても、言うまでもなく「男」ですが、そこで描かれる「弱さ」を自分の中に一つひとつ認めることによって、私は自分を作ってきました。

また、漱石の作品の中に描かれる女性像を、現実に出会う女性に一つひとつ当てはめることで、私の女性を見る目も作られていったと言ってよいでしょう。

それは折に触れ、繰り返し繰り返し読むことで、そのときどきの「自分」が見えてくる、という体験を通じて、私がやってきたことです。

「明暗」の津田 
「それから」の代助 ええかっこしい
「門」の宗助 小市民的
「行人」の一郎 
「心」の先生

主人公の持つ弱さ、醜さ
見栄っ張り エゴイスト ええかっこしい かっこ悪い

結局、漱石の描く「男」は、そういう人間としての弱さをえぐり出すために描かれているようなところがあって、それを読んでいる自分自身がまさしくそういう要素を持っていることを暴きたてられている、という感覚を持たされてきました。

自分の中の弱さを見つけ出して、何とかそれと戦わなければならないというのが私の人生だったと言ってもいいんです。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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