読書逍遥第386回 イギリス『女王の国の伝統と流行』1986刊行
冨田鋼一郎
有秋小春
李白
「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」
古人西のかた黄鶴楼を辞し
煙火三月揚州に下る
孤帆の遠影碧空に尽き
唯見る長江の天際に流るるを
古なじみの孟浩然と黄鶴楼で送別の宴を張り、浩然は花咲き霞立つ三月に揚州へ下ってゆく。
私(李白)は孟浩然と別れるのが辛く、舟をいつまでも見送っていたが、帆を張った舟影は次第に小さくなってゆき、水平線のかなた碧の山々の中に消えてしまった。
あとには長江の水が果てしもなく、ひろびろと天の下を流れるばかりである。
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蕪村「牛祭」部分
鳳凰台上に李白あり
太秦寺前に蕪村あり
この断簡に黄鶴楼と鳳凰台が出てくる
蕪村はいかに日常的に漢詩に接し、読み込んできたか
蕪村は、自らを唐の大詩人李白と対峙させている
ひのもとの我はもろこしの詩人にまけないぞと自らを鼓舞する