読書逍遥

読書逍遥第353回『わたしの唐詩選』(その4) 中野孝次著

冨田鋼一郎

『わたしの唐詩選』(その4) 中野孝次著

李白

「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」

 古人西のかた黄鶴楼を辞し
 煙火三月揚州に下る
 孤帆の遠影碧空に尽き
 唯見る長江の天際に流るるを

古なじみの孟浩然と黄鶴楼で送別の宴を張り、浩然は花咲き霞立つ三月に揚州へ下ってゆく。

私(李白)は孟浩然と別れるのが辛く、舟をいつまでも見送っていたが、帆を張った舟影は次第に小さくなってゆき、水平線のかなた碧の山々の中に消えてしまった。

あとには長江の水が果てしもなく、ひろびろと天の下を流れるばかりである。

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蕪村「牛祭」部分

 鳳凰台上に李白あり 
 太秦寺前に蕪村あり

この断簡に黄鶴楼と鳳凰台が出てくる

蕪村はいかに日常的に漢詩に接し、読み込んできたか

蕪村は、自らを唐の大詩人李白と対峙させている

ひのもとの我はもろこしの詩人にまけないぞと自らを鼓舞する

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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