読書逍遥第267回『嵯峨散歩、仙台・石巻』(その6) 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
韋応物の2作品
市井に棲みながらも心は隠者
自然に対する韋応物の感受性の柔らかさ、ひろがり、共感
⭕️「幽居」五言古詩の部分
微雨夜来過
不知春草生
青山忽已曙
鳥雀繞舎鳴
微雨 夜来過ぐ
知らず 春草の生ずるを
青山 忽ち已(すで)に曙(あ)け
鳥雀 舎を繞(めぐ)りて鳴く
折りから昨夜は小雨がひとしきり降った。この雨で春草も萌え出すかと思っていると、夜はたちまち明けて緑の山々が現れ、雀などが、この家のまわりでさえずり始めた
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五言絶句
⭕️「秋夜 寄丘二十二員外」
懐君属秋夜
散歩詠涼天
山空松子落
幽人応未眠
君を懐(おも)いて秋夜に属(しょく)し
散歩して涼天に詠ず。
山空しくして松子(しょうし)落ち
幽人応(まさ)に未だ眠らざるべし。
あなたを懐かしく思っている秋の夜に
涼しい空の下、散歩をしながら詩を詠む
山は人気がないので、松ぼっくりが落ちる音がよく聞こえる
ひっそりと暮らすあなたも、まだ眠れずにいることでしょう
禅味のある澄んだ詩だ