読書逍遥

読書逍遥第351回『わたしの唐詩選』(その2) 中野孝次著

冨田鋼一郎

『わたしの唐詩選』(その2) 中野孝次著

韋応物の2作品

市井に棲みながらも心は隠者

自然に対する韋応物の感受性の柔らかさ、ひろがり、共感

⭕️「幽居」五言古詩の部分

 微雨夜来過
 不知春草生
 青山忽已曙
 鳥雀繞舎鳴

 微雨 夜来過ぐ
 知らず 春草の生ずるを
 青山 忽ち已(すで)に曙(あ)け
 鳥雀 舎を繞(めぐ)りて鳴く

折りから昨夜は小雨がひとしきり降った。この雨で春草も萌え出すかと思っていると、夜はたちまち明けて緑の山々が現れ、雀などが、この家のまわりでさえずり始めた

@@@@

五言絶句
⭕️「秋夜 寄丘二十二員外」

 懐君属秋夜 
 散歩詠涼天 
 山空松子落 
 幽人応未眠 

 君を懐(おも)いて秋夜に属(しょく)し
 散歩して涼天に詠ず。
 山空しくして松子(しょうし)落ち
 幽人応(まさ)に未だ眠らざるべし。

あなたを懐かしく思っている秋の夜に
涼しい空の下、散歩をしながら詩を詠む

山は人気がないので、松ぼっくりが落ちる音がよく聞こえる
ひっそりと暮らすあなたも、まだ眠れずにいることでしょう

禅味のある澄んだ詩だ

[クヌギ]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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