読書逍遥

読書逍遥第349回『白河・会津のみち 赤坂散歩』(その1) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『白河・会津のみち 赤坂散歩』(その1) 司馬遼太郎著

白河領は奥州の玄関
北方仙台の伊達氏五十九万石や南部氏二十万石は独立性の高い藩でいつ南下して江戸を脅かさないともかぎらない

「おくのほそ道」

白河にて

心許なき日かず重るまゝに、白川の関にかゝりて旅心定りぬ。、、、
秋風を耳に残し、紅葉を俤にして、青葉の梢猶あはれ也。卯の花の白妙に、茨の花の咲そひて、雪にもこゆる心地ぞする。古人冠を正し衣装を改し事など、清輔の筆にもとゞめ置れしとぞ。
○卯の花をかざしに関の晴着かな 曾良

須賀川にて

「白河の関いかにこえつるや」と問。「長途のくるしみ、身心つかれ、且は風景に魂うばゝれ、懐旧に腸を断て、はかばかしう思ひめぐらさず。」

○風流の初(はじめ)やおくの田植うた

☆☆☆

→陸奥は都びとのあこがれの地
平安期以来、みちのくの山河は風雅の源泉

「宮城野」「信夫(しのぶ)捩摺(もじずり)」
「名取川」「安積の沼」

「宮城野」
秋草の野をおもい、萩咲きこぼれるあわれさを思い、さらにははるかに野を吹きわたる陸奥の風をおもう

「信夫(しのぶ)捩摺(もじずり)」
千々にみだれる恋の心にイメージを重ねる乱れ模様の絹布

「名取川」
陸奥(宮城県を東流して仙台湾にそそぐ)の川というだけで、詞華になった

「安積の沼」
今の郡山市。沼に咲く花菖蒲に似た花を″花かつみ″と呼んで珍重した

○陸奥(みちのく)のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れんと思ふわれならなくに(古今集)

○陸奥にありといふなる名取川なき名とりては苦しかりけり(壬生忠岑)

○都をば霞とともにたちしかど秋風ぞ吹く白河の関(能因法師988-1050?)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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