日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その14)

冨田鋼一郎
[ソバの花]

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

82歳当時の1997年からいくつか 

○ 立春の朝よく晴れて馥郁と
  紅白の梅咲き揃いたり
     (1997.2)

○ 「東京歩十八会」
 敵が撮りしグワ島激戦のビデオ
  見せられ無惨唇を噛む
     (1997.2)

○ 「小日向台町」
 「坊ちゃん」の結びの一行で覚えたる
  我には記念の小日向台町
     (1997.3)

○ 「花時の関口芭蕉庵」
 芭蕉庵の門開かれて訪う人の
  連なり巡る桜花見上げつつ
     (1997.4)

○ 「根岸子規庵」
 気迫には気圧さるばかり子規庵に  
  気持静めて門を潜り抜りぬ
     (1997.9)

○ 「絵画ゴッホ」
 近づきつ距離おきつ見るゴッホの絵
  大地も空ものたうつ如し
     (1997.11)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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