日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その13)

冨田鋼一郎
[コスモス]

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

81歳当時の1996年からいくつか

○ 「老いの一日」
 目覚め早く二度と眠れぬ老いが身の
  新聞来るを所在なく待つ
      (1996.1)

○ 「寒の富士」
 高速道ゆく車より見え高々と
  空に浮きたる富士を見飽かず
      (1996.2)

○ 「老いの偶感」
 霞む字を眼鏡の所為と無意識に
  息かけ拭きて朝刊を読む
      (1996.4)

○ 「老いの偶感」
 二階にはめったに昇らぬ老いが住まい
  二階いつしか物置きめきぬ
      (1996.4)

○ 「湯島聖堂」
 「孔子の木」といみじくも名付け給いたる
  富太郎博士偲ばす楷の木
      (1996.10)

○ 「樋口一葉旧跡探訪」
 炭団坂登りても一度一葉の
  住みにし谷底振り返り見ぬ
      (1996.12)

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました