読書逍遥

読書逍遥第334回『南蛮の道』(その6) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『南蛮の道』(その6) 司馬遼太郎著

「騎士団」について

騎士団は、12世紀、十字軍戦争の過程で生まれたキリスト教世界の修道的な騎士の結社である。その結社は国家を超えていた。

彼らは軍事的にも、貧者や病者に対する救いの上でも大いに活躍したが、大結社になると、結社が所有する富は一つや二つの王国をしのいだ。誤訳を覚悟で日本史上の言葉に無理矢理に翻訳すると、僧兵団とでもいえるかもしれない。

騎士団の中で最大のもの1つは、テンプル騎士団と呼ばれるもので、その最盛期には加盟騎士一万五千といわれた。荘園の多くは、ヨーロッパ諸国の王国が寄進したものである。

彼らは異教徒と勇敢に戦う一方、僧のように規律を守り、同時に結社の財産を増やすため、商業活動もしていた。

結社の規律は厳しかった。結社員は妻帯できなかった。また入会にあたっては、第一にキリストの騎士になること、第二に清貧、第三に霊的な救いのために現世の苦行に耐えることが誓わせられた。

ついでながら、騎士団の活躍は12世紀から16世紀位までで、その後、衰退する。

イグナティウス・ロヨラが、カトリックの危機を感じ、16世紀、イエズス会を結社した動機については、過去の騎士団の影響が皆無であったとはいえない。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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