第97回 『そして、自分への旅』森本哲郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
「騎士団」について
騎士団は、12世紀、十字軍戦争の過程で生まれたキリスト教世界の修道的な騎士の結社である。その結社は国家を超えていた。
彼らは軍事的にも、貧者や病者に対する救いの上でも大いに活躍したが、大結社になると、結社が所有する富は一つや二つの王国をしのいだ。誤訳を覚悟で日本史上の言葉に無理矢理に翻訳すると、僧兵団とでもいえるかもしれない。
騎士団の中で最大のもの1つは、テンプル騎士団と呼ばれるもので、その最盛期には加盟騎士一万五千といわれた。荘園の多くは、ヨーロッパ諸国の王国が寄進したものである。
彼らは異教徒と勇敢に戦う一方、僧のように規律を守り、同時に結社の財産を増やすため、商業活動もしていた。
結社の規律は厳しかった。結社員は妻帯できなかった。また入会にあたっては、第一にキリストの騎士になること、第二に清貧、第三に霊的な救いのために現世の苦行に耐えることが誓わせられた。
ついでながら、騎士団の活躍は12世紀から16世紀位までで、その後、衰退する。
イグナティウス・ロヨラが、カトリックの危機を感じ、16世紀、イエズス会を結社した動機については、過去の騎士団の影響が皆無であったとはいえない。