日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その11)

冨田鋼一郎
[モミジアオイ]

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

79歳当時の1994年からいくつか

○ 「誕生日」
 比庵師と生まれ日同じの七十九
  その齢の師の書画に見とるる
      (1994.2)

○ 「リルハンメル五輪大会」
 墨書きされし日の丸見れば蘇る
  兵に駆り立てられし若き日
      (1994.3)

○ 「米不足」
 何のため減反なりし只一度の
  冷夏に出来し米買う行列
      (1994.3)

○ 「米不足」
 比島に負け虚脱の俘虜にあてがいの
  カリフォルニア米のうまさ忘れず
      (1994.3)

○ 「故里」
 好物なりし鰻に亡き父母偲ばんと
  故里分葱(わけぎ)の採りたてを買う
      (1994.4)

○ 「シンドラーのリスト」
 見終わりし映画の無残の舞台なる
  クラクフとう町地図上に探す
      (1994.5)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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