日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その10)

冨田鋼一郎

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

びっしりと短歌が書かれた便箋を手渡されたときに、どうして感想を伝えることが出来なかったのか

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

78歳当時の1993年からいくつか

○ 「大寒」
 夜なべする妻に教わり無聊わがコップ
  二杯の甘酒沸かす
 (1993.1)

○身の締まる寒さの中に首竦め
  仰ぐ朝日に梅匂いくる
       (1993.1)

○ 「誕生日 二月八日」
 父母の齢遥かに越えて巡り合う
  今日の生まれ日おろそかならず
(1993.2)

○ 「金婚式 二月二十三日」
 嫌われず世話にもならず頼られず
  二人健やかに老いたきものを
      (1993.3)
○ 「ゴルフ」
 ティショットを軽々振りし子のボール
  遥かに目がけ第二打を打つ
      (1993.8)

○ 「弁天島 浜名湖」
 この深みに溺れかかりしを曳き上げて
  くれたる叔母も逝きて遥けき
       (1993.12)

○雲出でて冷えびえ暮れし冬至日の
  弓張月が中天に冴ゆ
       (1993.12)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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