日々思うこと

浙江の潮(うしお)

冨田鋼一郎

浙江の銭塘江の潮の遡上は、洞庭湖や西湖同様、名勝の地として名高い

松島も、入江が入り組んでいて、唐土の銭塘江に並ぶ景勝地だ

芭蕉は松島の縁に佇んで、唐土の景勝地の洞庭湖や西湖と、浙江の潮を思い浮かべる

 抑(そもそも)ことふりにたれど、
 松島は扶桑第一の好風にして、
 凡(およそ)洞庭・西湖を恥ず。
 東南より海を入て、江の中三里、
 浙江の潮をたゝふ (「おくのほそ道」)

「浙江の潮」は、九江市の「廬山の霧雨」と並ぶ絶景で、陶淵明、李白、白居易ら詩人たちに詠まれてきた

 廬山は煙雨、浙江は潮
 未だ到らざれば千般恨み消せず
 到り得て帰り来たれば別事無し
 廬山は煙雨、浙江は潮

廬山煙雨浙江潮:
廬山の霧雨は霧雨で、浙江の銭塘江(せんとうこう)の潮の遡上は、潮の遡上に過ぎない

「おくのほそ道」の象潟と松島のくだりは、唐土の詩人たちの詩と同様に名文である

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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