父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その5)
冨田鋼一郎
有秋小春
どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる
2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)
毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き
73歳当時の1988年からいくつか
○惚け防止のわれに打たせんワープロの
カタログひろげ妻の勧むる
(1988.2)
○一日だけ余生延びしうるう年の
寒さはおまけと冷え冷え晴るる
(1988.3)
○サラリーマンとなりて五十年
かにかくに職もつ幸せ今朝桜咲く
(1988.4)
○縁ゆかりさらさらなきに「巨人」が好き
われと妻との茶の間の声援
(1988.6)
[関口芭蕉庵]
○芭蕉住みし頃もかくやと古池の
草繁る中黒く淀める
(1988.9)
○雨後に射す淡き夕日に光つつ
紫式部の円ら実の冴ゆ
(1988.9)