読書逍遥第282回『長江・夢紀行』(その2) さだまさし中国写真集 1983年発行
冨田鋼一郎
有秋小春
電灯の発明は、人類文明史上、安全で、最も生活の向上に貢献したものだろう
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[エジソンの贈り物]
ジェームズワットが開発した蒸気機関は、19世紀の世界を変えた。
蒸気機関は、新しい世紀とともに回転運動を主力とする蒸気タービンに変身する。こうした動力機関は、移動させることができるという点で産業に多大な貢献をした。だが、エネルギーそのものを移動させるわけにはいかなかった。
目に見えないエネルギーを自由に輸送して利用する。これこそが、次の動力源、「電気」の真骨頂だった。
この特質によって、様々な分野における電気の利用が20世紀を創り出すことになる。
蓄音機、活動写真、印刷機、アルカリ蓄電池、、、エジソンが、どれほど画期的な”発明王”であったか、彼の手に成るこれらの発明品をあげただけで察するに充分である。
だが、彼の真価は何よりも電球にある。いや、白熱電球を広い範囲にわたって、普及させたという、まさにその点にあった。
エジソンの発想は、一定の地域に等しく電気を供給し、配電網を作り上げるという点にある。その地区は単に照明だけでなく、熱や動力を利用できるようになるだろう。
エジソンが、20世紀のシミュレーションの舞台として選んだのは、ニューヨーク市のパールストリート*だった。
1882年9月4日、新たな”電気文明区”のスイッチが押された。20世紀文明の幕開けを宣言するデモンストレーションである。
*パール・ストリート
ニューヨーク市マンハッタン区ダウンタウンを走る通り。南端はバッテリー・パークで、ブルックリン橋をくぐると西へと曲がり、センター・ストリートに突き当たる地点が北端。パール・ストリートは元来のマンハッタン島の東の海岸線にあたる。