読書逍遥

読書逍遥第319回『文明の主役 エネルギーと人間の物語』(その17) 森本哲郎著 2000年発行

冨田鋼一郎

『文明の主役 エネルギーと人間の物語』(その17)

電灯の発明は、人類文明史上、安全で、最も生活の向上に貢献したものだろう

☆☆☆☆

[エジソンの贈り物]

ジェームズワットが開発した蒸気機関は、19世紀の世界を変えた。

蒸気機関は、新しい世紀とともに回転運動を主力とする蒸気タービンに変身する。こうした動力機関は、移動させることができるという点で産業に多大な貢献をした。だが、エネルギーそのものを移動させるわけにはいかなかった。

目に見えないエネルギーを自由に輸送して利用する。これこそが、次の動力源、「電気」の真骨頂だった。

この特質によって、様々な分野における電気の利用が20世紀を創り出すことになる。

蓄音機、活動写真、印刷機、アルカリ蓄電池、、、エジソンが、どれほど画期的な”発明王”であったか、彼の手に成るこれらの発明品をあげただけで察するに充分である。

だが、彼の真価は何よりも電球にある。いや、白熱電球を広い範囲にわたって、普及させたという、まさにその点にあった。

エジソンの発想は、一定の地域に等しく電気を供給し、配電網を作り上げるという点にある。その地区は単に照明だけでなく、熱や動力を利用できるようになるだろう。

エジソンが、20世紀のシミュレーションの舞台として選んだのは、ニューヨーク市のパールストリート*だった。

1882年9月4日、新たな”電気文明区”のスイッチが押された。20世紀文明の幕開けを宣言するデモンストレーションである。

*パール・ストリート
ニューヨーク市マンハッタン区ダウンタウンを走る通り。南端はバッテリー・パークで、ブルックリン橋をくぐると西へと曲がり、センター・ストリートに突き当たる地点が北端。パール・ストリートは元来のマンハッタン島の東の海岸線にあたる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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