日々思うこと

父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その3)

冨田鋼一郎

どのページの歌をみても、親父の面影、息遣いを感じる

2週間で便箋一枚に歌が埋まる(最初は鉛筆で、途中1988年からワープロになる)

毎日一首のペースを50年も続けたことに驚き

72歳当時の1987年からいくつか

○わが庭の梅は白きが三分咲き
  紅きは蕾のままに日に映ゆ
    (72歳 1987.2)

○身を正し卒業式の式辞述ぶ
  壺一杯の桃匂いつつ
    (72歳 1987.3)

[CT検査]
○癌の疑い晴れしを妻に伝えつつ
  おのずとわれの多弁になりいる
    (72歳 1987.5)

[中国旅行]
○みまかりし孔子の齢にわがなりて
  はるばる来たりおろがむ墓を
    (72歳 1987.8)

○延々と峰を巡りて長城の
  うねるはたては霧にけぶろう
    (72歳 1987.8)

○日に幾度路地に落葉を掃く妻の
  「もう一息よ」と木々見上げ言う
(72歳 1987.12)

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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