読書逍遥

読書逍遥第311回『文明の主役 エネルギーと人間の物語』(その9) 森本哲郎著 2000年発行

冨田鋼一郎

『文明の主役 エネルギーと人間の物語』(その9) 森本哲郎著

長江流域の水を北の黄河へ送る構想は、毛沢東が提唱した「南水北調」として今でも生きている

その治水思想の根源は、はるか隋王朝まで遡る

☆☆☆☆

《万里の運河(万里の長城の水系版)と宋の繁栄》

「万里の長城」 は、外敵の侵入を防ぐため
「黄河・長江を結ぶ大運河」は、物資の流通による経済活動促進が主目的

現代文明にとって高速道路は不可欠なものだ
それと同様に、中国文明を作り上げたのは、船の道である大運河であった

それまで中国各地に設けられた運河を巨大なネットワークにしたのが随時代
土木技術は、随時代煬帝からの遺産である

隋初代皇帝楊堅(文帝)
都長安は水利の便がない

次代楊広(煬帝) が、黄河中流の洛陽を副都として東京(とうけい)とする

さらに、江南の物産を都に運ぶために黄河を長江に結ぶ必要
両河の間を流れる淮河(わいが)から長江へ連絡する通済渠(つうさいきょ)を造成する

さらに、江南河を掘り、銭塘江(せんとうこう)に臨む余杭(杭州)へ伸ばし、とうとう中国内陸が海につながる

その運河の恩恵を享受したのが、南北宋時代(960-1279)
これはヨーロッパのルネッサンス期に比される

汴京(べんけい)(開封)と南宋の都・臨安(杭州)の繁栄を伝える『東京夢華録』『清明上河図』

 景徳鎮の陶磁器
 宋儒(新しい儒教)の大成
 水墨山水画の発展
 木版印刷による書籍出版
 喫茶の習慣定着
 農業技術の開発
 製紙・漆器・銀器手工業活発化
 紙幣の流通

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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