読書逍遥

読書逍遥第296回『中国・蜀と雲南のみち』(その7最後) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『中国・蜀と雲南のみち』(その7最後) 司馬遼太郎著

雲南省昆明の少数民族の「イ族」について

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中国における少数民族は五十六種というが、それぞれの祖先たちは、長い歴史の中で低地に降り、その血液と文化を中国文明というるつぼの中に溶け込ませた。

逆に言えば、少数民族の固有文化こそ、文明と言う普遍性に昇華する以前の細片群だと思うのだが、漢民族はながくそのことを考えず、自分たちこそ華(文明)で、僻境に残って固有文化を持ち続ける集団は夷だと思い、華・夷は対立概念であるとしてきた。

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イ族のイは、「西南夷」の夷である。
「クンミン(昆明)とは、古くは民族名でした。それがやがて地名になりました。イ族の祖先です」

接待してくれる2人のお嬢さんの顔立ちは、日本人そのままで、それも可愛く品が良い。

イ族は、黒い色を尊ぶ。彼らは白い絹地のシャツに、胴衣(ベスト)を着ている。布は黒で、胸や肩に入っている軽やかな飾りの線が美しい。下はズボンである。頭には縁に飾りのある黒い帽子をかぶって、民族服としては、第一級のかっこよさを感じさせる。

娘の衣装というのは民族の花だと思った。ただ、どの少数民族も娘の衣装は形も装飾も一民族一種類で、多様ということは伝統として許されない。元来、自分の文化についての頑固さこそ、少数民族が多数民族に溶けることなく凝固を保ってきた唯一の理由であるかと思ったりした。

さだまさし『長江・夢紀行』より
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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