読書逍遥

読書逍遥第292回『中国・蜀と雲南のみち』(その3) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『中国・蜀と雲南のみち』(その3) 司馬遼太郎著

[四川省成都]

四川省全体の面積は約56万平方キロで、スペインよりやや広い。人口は70百万人で、スペインの50百万人よりよほど多い。

成都盆地だけが平坦で、農耕も発展し、蜀漢という地方帝国の時代から多くの人口を養ってきた。
盆地の広さは我が国の茨城県がすっぽり入るほどだ。

沿道には、樹齢10年ほどのユーカリの並木がつづいている。清末にオーストラリアの公使が持ってきて植えたのが最初と聞いている。

並木の向こうは両側とも一望の野なので、わら屋根の家が多い。ときどき日本の東北や北陸に多い曲屋そっくりの農家もある。

農家のまわりには必ず竹藪が盛り上がっている。日本は竹の文化であると言われるが、四川省こそがその名に値いするのではないか。竹の種類はこの一省だけで日本より多く、百種類ほどもあり、利用法も多様である。

○わが屋戸のいささ群竹吹く風の
   音のかそけきこの夕べかも
            大伴家持

この四川の野に、浅い緑な班(むら)をつくって点在する群竹には、いささなものもあれば数戸を蔽って杜をなすようなものもある。

[いささ群竹]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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