読書逍遥

読書逍遥第291回『中国・蜀と雲南のみち』(その2) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『中国・蜀と雲南のみち』(その2) 司馬遼太郎著

蜀(成都)

四川省は、古来、巴蜀(はしょく)と呼ばれた。「巴」は現在の重慶を中心とし、「蜀」は現在の成都を中心とする。中国の奥地である。

山多く、水流も多い。天水をこの広大な山岳地域にたくわえ、あまたの急流をなして流し、やがて諸流が長江(揚子江)の水となって中国大陸をうるおしている。いわば中国大陸の巨大な水甕のような地である。

平地の漢民族にとって、蜀へは、行くのではなくよじのぼるのである。

前途には千山万岳が重なり、それらの断崖には道がなく、いわゆる「蜀の桟道」が架けられている。
断崖に棚をかけるようにして造られた道が桟道で、唐の詩人李白(701-762)も、

 アア危キカナ、高キカナ
 蜀道ノ難キハ、青天ニ上ルヨリモ難シ

と詩っている。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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