第61回『炭太祇(たんたいぎ)の句 その1』
冨田鋼一郎
有秋小春
[青年たちの生き方]
「日本は文明国になって、素晴らしい国でうらやましいですよ。早くあなた方の国に、私たちも追いつきたいなぁ」
そんな言い方を、中国の、特に若い人たちがよくしました。
で、この言い方の面白いのは、彼らが外国のことを話しているって感じではないことです。例えば、従兄がうまく出世して、うらやましいなぁ、僕も負けちゃいらんないぞ、そんな感じなのです。
何かこう、親戚みたいな感じを、その言い方の中に感じるのです。
彼らにとって、やはり僕らは近しい友なのです。肉親ほどにも近しい友なのです。このことは、絶対に大事にしなければいけないことなのです。
日本語を学んでいる若者の多さにも、正直言って驚きました。最も近い文明国である日本の言葉を学ぶ、それがとても重要である、という事はわかるけれども、これほどまでに多いとも思わなかったのです。
とにかく中国は、僕らの親戚であり、友人なのです。
たくさんの人に出会いました。たくさんの街を旅しました。みんなとても親切でした。もちろんいろんなトラブルはあったけれど、”憎い”って思ったことは一度もなかった。
そんな国と戦争したんですね、日本は。
戦争って結局、傷つけあい憎しみあって後悔を残すだけなのです。一体、僕らの国は、ここまで来て何をしようとしたのだろう。
意地悪な気持ちで、ただ中国って国を蹂躙しようとしただけなのだろうか。
そんなはずはない。命をやりとりして、結局手に入れたものは、何だったのですか?何を得たと言うのですか?