読書逍遥

読書逍遥第288回『長江・夢紀行』(その8) さだまさし中国写真集 1983年発行

冨田鋼一郎

『長江・夢紀行』(その8) さだまさし中国写真集 1983年発行

[青年たちの生き方]

「日本は文明国になって、素晴らしい国でうらやましいですよ。早くあなた方の国に、私たちも追いつきたいなぁ」

そんな言い方を、中国の、特に若い人たちがよくしました。

で、この言い方の面白いのは、彼らが外国のことを話しているって感じではないことです。例えば、従兄がうまく出世して、うらやましいなぁ、僕も負けちゃいらんないぞ、そんな感じなのです。

何かこう、親戚みたいな感じを、その言い方の中に感じるのです。

彼らにとって、やはり僕らは近しい友なのです。肉親ほどにも近しい友なのです。このことは、絶対に大事にしなければいけないことなのです。

日本語を学んでいる若者の多さにも、正直言って驚きました。最も近い文明国である日本の言葉を学ぶ、それがとても重要である、という事はわかるけれども、これほどまでに多いとも思わなかったのです。

とにかく中国は、僕らの親戚であり、友人なのです。

たくさんの人に出会いました。たくさんの街を旅しました。みんなとても親切でした。もちろんいろんなトラブルはあったけれど、”憎い”って思ったことは一度もなかった。

そんな国と戦争したんですね、日本は。

戦争って結局、傷つけあい憎しみあって後悔を残すだけなのです。一体、僕らの国は、ここまで来て何をしようとしたのだろう。

意地悪な気持ちで、ただ中国って国を蹂躙しようとしただけなのだろうか。

そんなはずはない。命をやりとりして、結局手に入れたものは、何だったのですか?何を得たと言うのですか?

[クサキョウチクトウ]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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