読書逍遥第152回 『思想の冒険家たち』森本哲郎著 1982
冨田鋼一郎
有秋小春
漱石講演「現代日本の開化」では、日本人の性格をイギリス人との比較で論じた。
さだまさしは、中国人と比較をしている。
☆☆☆
[日本と中国の物の考え方、事象の捉え方、物の使い方の本質的な違い]
我々は、外国から日本へ入ってきたものをそっくりそのまま、自分の生活の中へ取り入れ、そのままの形で使おうとします。それは、使おうとするというより、入ってきてしまったものに合わせて、自分の生活を変えていこうとするようにすら見えるほどです。
中国の人たちは、もっとしたたかに見えます。入ってきたものをそっくりそのまま使うなんてことは、ほとんどしないようです。自分たちの生活にそれを溶け込ませる努力、それを第一に考えるのです。
ここが我々と最も違うところでしょう。
その形跡は随所に残っています。例えば、スパイス、香辛料ひとつ取ってみてもそうなのです。
西洋料理でのスパイスは、そのスパイスを主役にしたものが多い。紅茶をシナモンでかき混ぜる。こんな事は中国では本当に珍しい。スパイスを使うにしても、中国料理の中のあくまで隠し味として味を構成するもののひとつとして利用する。
こんなところが中国の人たちの物の使い方のようです。その強さです。
あるものが外国から入ってくる。もしそれが、日本と中国へ同時に入ってきたとしても、それが溶け込む速度は、中国では日本とは比較にならないほど遅いでしょう。しかし、一旦溶け込んだときには、中国では、それはもう外国からの渡来物ではなく、完全に彼ら自身のものとなっている、そういうことなのです。