読書逍遥

読書逍遥第284回『長江・夢紀行』(その4) さだまさし中国写真集 1983年発行

冨田鋼一郎

『長江・夢紀行』(その4) さだまさし中国写真集 1983年発行

漱石講演「現代日本の開化」では、日本人の性格をイギリス人との比較で論じた。

さだまさしは、中国人と比較をしている。

☆☆☆

[日本と中国の物の考え方、事象の捉え方、物の使い方の本質的な違い]

我々は、外国から日本へ入ってきたものをそっくりそのまま、自分の生活の中へ取り入れ、そのままの形で使おうとします。それは、使おうとするというより、入ってきてしまったものに合わせて、自分の生活を変えていこうとするようにすら見えるほどです。

中国の人たちは、もっとしたたかに見えます。入ってきたものをそっくりそのまま使うなんてことは、ほとんどしないようです。自分たちの生活にそれを溶け込ませる努力、それを第一に考えるのです。
ここが我々と最も違うところでしょう。

その形跡は随所に残っています。例えば、スパイス、香辛料ひとつ取ってみてもそうなのです。

西洋料理でのスパイスは、そのスパイスを主役にしたものが多い。紅茶をシナモンでかき混ぜる。こんな事は中国では本当に珍しい。スパイスを使うにしても、中国料理の中のあくまで隠し味として味を構成するもののひとつとして利用する。
こんなところが中国の人たちの物の使い方のようです。その強さです。

あるものが外国から入ってくる。もしそれが、日本と中国へ同時に入ってきたとしても、それが溶け込む速度は、中国では日本とは比較にならないほど遅いでしょう。しかし、一旦溶け込んだときには、中国では、それはもう外国からの渡来物ではなく、完全に彼ら自身のものとなっている、そういうことなのです。

[ルリタマアザミ]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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