読書逍遥第193回 『細胞』(上・下) (その11 )ジッダールタ・ムカジー著
冨田鋼一郎
有秋小春
蘇州、杭州、紹興、寧波と江南の地を辿った
著者が上海を避けた理由がわかるような気がする
長江を南京から遡ったドキュメンタリー映画「再会長江」を思い出した
隣国はさまざまな意味で巨大な社会だ
☆☆☆
[戎克(ジャンク)船]
人間は単に地を歩くだけの動物だが、ときに船に乗って水を渉るということの快感は、ふだん眠っている深い欲求とつながりのあることかもしれない。
原始文化の中で、しばしば鳥や魚の形が描かれたり、土や木で作られたりする。
そのことは、人間に欠けている鳥のように空を飛んだり、魚のように水の中を泳いだり、することへの強い冀求(ききゅう)とつながるものであろう。
冀求があればこそ、呪術的理論が付加されていって、原始文化のなかでの形而上世界が出来上がる。
ともかくも、船が走り出した早々、誰もが感ずるこの昂奮は、先祖以来の願望とつながる戦慄のようなものかと思われる。