読書逍遥第287回『長江・夢紀行』(その7) さだまさし中国写真集 1983年発行
冨田鋼一郎
有秋小春
「杭州」の旅を続ける
「浙江は潮(うしお)」「海嘯(かいしょう)」という現象について
宋代の詩人蘇軾(蘇東坡)の詩
廬山は煙雨浙江は潮
未だ到らざれば千般恨み消せず
到り得て帰り来たれば別事無し
廬山は煙雨浙江は潮
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杭州湾が奥へゆくにつれて狭くなって、銭塘江の河口がラッパ状になっている。
外洋が満潮になったとき、潮が湾の奥へ押し寄せて、ラッパに吸い込まれるようになる。沖から白波だった三、四メートルの高潮が、真っ白な波頭をきらめかせてつぎつぎに押し寄せる。
一番壮観なのは、旧暦八月十八日正午におこる。
「おくのほそ道」に″浙江の潮″が登場する
[松島]
日既午にちかし 船をかりて松島にわたる
其間二里余雄島の磯につく
抑ことふりにたれど松島は扶桑第一の好風にして凡洞庭西湖を恥ず 東南より海を入て江の中三里浙江の潮をたたふ
島々の数を尽して欹ものは天を指ふすものは波に匍匐 あるは二重にかさなり三重に畳みて左にわかれ右につらなる
負るあり抱るあり 児孫愛すがごとし
松の緑こまやかに枝葉汐風に吹たわめて屈曲おのづからためたるがごとし 其景色窅然として美人の顔を粧ふ
ちはや振神のむかし大山づみのなせるわざにや `造化の天工いづれの人か筆をふるひ詞を尽さむ