読書逍遥

読書逍遥第275回読書逍遥『中国・江南のみち』(その5) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『中国・江南のみち』(その5) 司馬遼太郎著

「杭州」の旅を続ける

「浙江は潮(うしお)」「海嘯(かいしょう)」という現象について

宋代の詩人蘇軾(蘇東坡)の詩

 廬山は煙雨浙江は潮
 未だ到らざれば千般恨み消せず
 到り得て帰り来たれば別事無し
 廬山は煙雨浙江は潮

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杭州湾が奥へゆくにつれて狭くなって、銭塘江の河口がラッパ状になっている。

外洋が満潮になったとき、潮が湾の奥へ押し寄せて、ラッパに吸い込まれるようになる。沖から白波だった三、四メートルの高潮が、真っ白な波頭をきらめかせてつぎつぎに押し寄せる。

一番壮観なのは、旧暦八月十八日正午におこる。

「おくのほそ道」に″浙江の潮″が登場する

[松島]
日既午にちかし 船をかりて松島にわたる其間二里余雄島の磯につく
抑ことふりにたれど松島は扶桑第一の好風にして凡洞庭西湖を恥ず 東南より海を入て江の中三里浙江の潮をたたふ島々の数を尽して欹ものは天を指ふすものは波に匍匐 あるは二重にかさなり三重に畳みて左にわかれ右につらなる負るあり抱るあり 児孫愛すがごとし松の緑こまやかに枝葉汐風に吹たわめて屈曲おのづからためたるがごとし 其景色窅然として美人の顔を粧ふちはや振神のむかし大山づみのなせるわざにや `造化の天工いづれの人か筆をふるひ詞を尽さむ

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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