読書逍遥

読書逍遥第262回『嵯峨散歩、仙台・石巻』司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『嵯峨散歩、仙台・石巻』司馬遼太郎著

蕪村に「渡月橋図」という有名な絵がある

嵐山渡月橋について「嵯峨散歩」から抜粋
この描写は、一幅の絵を想像させる

☆☆☆☆

渡月橋は、古来、嵐峡という自然の造形を引きしめてきた人工の部分である。部分としてのたしかさは日本の風景の中でも比類がない。

この景観には、大きく孤を描いた唐橋は似合わない。渡月橋は、ひたすら水平の一線をなしている。それも、橋であることの自己顕示を消し去ったほどに控えめである。

この感覚は、桂離宮の軽みにも通じている。また、どこから見ても、景観の中では、低目の位置に渡月橋の一線があり、この位置が、黄金分割になっている。

といって、構造は鉄骨・鉄筋コンクリートなのである。しかし、たれの目にも木造橋梁としか思えない。その秘密は、構造上、無用の部分として腰板がほどこされていることと、高欄が檜であるということにあるらしい。尾州檜だそうである。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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