読書逍遥

読書逍遥第254回『北のまほろば』街道をゆく(その3) 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『北のまほろば』街道をゆく(その3) 司馬遼太郎著

「三内丸山遺跡」

縄文時代、世界で一番食べ物が多くて、住みやすかったのが青森県だったろうということを、私も考古学者たちの驥尾(きび)に付してそう思い、いわば”まほろば”だったと考えてきた。
それが土中から現れようとは思わなかった。

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「ブナ林」

ブナ林は、初夏、光が湧くように美しい。
冬ごとに葉が落ち、林間があかるくなる。根方に厚い腐葉土がつくられてゆく。実は、人にとっても他の動物にとっても、食用になる。ドイツでは、ブナの森は”森の母”というそうである。

青森と秋田の両県にまたがるブナの森の白神山地は世界遺産に指定されている。

想像するだに楽しいことは、五千年前、東北地方一円がブナやミズナラの一大森林だったことである。縄文文化はその大森林の中ではぐくまれた。

なんといっても、ブナの森林は、その根方に大量の水をたくわえるのである。その水が細流になり、川になり、サケの遡上を促す。

ブナは、風倒木までが役に立つ。腐食した木に食用キノコが生え、倒れた木があけた大きな穴に、熊が冬眠する。人をふくめた生物のための″神の工場″のようなものである。

その森の中に今もマタギがいる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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