冨田鋼一郎
池の蛙はどこからか集まって、か弱く日もすがら鳴いている。雑司ヶ谷墓地では牡丹、紫陽花の芽は膨らんできた。ユキヤナギはまだ一分咲き。
最近耳を疑うような凶悪事件がこれでもかと相次ぐ。世の中ほんとうに余裕がなくなった。家庭、地域、職場などさまざまな現場社会で悲鳴が上がっている。指導者たちの見て見ぬ振りの心無い言葉が拍車をかける。ギスギスしたつまらぬ社会になった。
こころほどうごくものなし春の暮 暁台
風重く人甘くなりて春暮ぬ 暁台
菜の花といふ平凡を愛しけり 風生
古来春には「人甘くなる」はずが、いったいどうしたことか。たまには見ぬ世の人の俳諧に浸って、心のバランスを取り戻したい。
ABOUT ME
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。
各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。
著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)