骨董品

渡辺崋山 肉筆白描画「海老図」 

冨田鋼一郎
H16.5 x W23.3 (cm)

款記 「呉興銭舜擧 □□」
印  「登」(朱文方印)

ホウノキの大きな葉の上にクルマエビが5尾。白描画である。
宋時代の画家、銭舜擧の筆意に倣ったもの。
押印の場所を□□で記しているところから、着色する前の下絵なのだろう。その筆線に歪みやよどみがない。
タッチは、非常に柔らかい。筆線のみで味わい深い表現をするのは見た目ほど容易でなく、それなりの技能が求められる。
心が乱れていてはできないことだ。

銭選(せんせん13世紀生没年不詳)
宋末から元初にかけての文人画家・篆刻家。字は舜挙、浙江省呉興生まれ。

白描画:東洋画で毛筆による墨の線だけで輪郭を描いた絵。西洋画におけるデッサンとは異なり、筆線そのものの 表現力(骨法用筆)を鑑賞する。

これは、作者不明として打ち捨てられていたものをマーケットから救いあげた貴重な一枚。
拙著『蕪村と崋山』に掲載した。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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