蕪村自句「不二ひとつ」 松村呉春「不二」画 合作
冨田鋼一郎
有秋小春
款記 「呉興銭舜擧 □□」
印 「登」(朱文方印)
ホウノキの大きな葉の上にクルマエビが5尾。白描画である。
宋時代の画家、銭舜擧の筆意に倣ったもの。
押印の場所を□□で記しているところから、着色する前の下絵なのだろう。その筆線に歪みやよどみがない。
タッチは、非常に柔らかい。筆線のみで味わい深い表現をするのは見た目ほど容易でなく、それなりの技能が求められる。
心が乱れていてはできないことだ。
銭選(せんせん13世紀生没年不詳)
宋末から元初にかけての文人画家・篆刻家。字は舜挙、浙江省呉興生まれ。
白描画:東洋画で毛筆による墨の線だけで輪郭を描いた絵。西洋画におけるデッサンとは異なり、筆線そのものの 表現力(骨法用筆)を鑑賞する。
これは、作者不明として打ち捨てられていたものをマーケットから救いあげた貴重な一枚。
拙著『蕪村と崋山』に掲載した。