読書逍遥

読書逍遥第675回『司馬遼太郎が発見した日本』(その1)「街道をゆく」を読み解く 松本健一著

冨田鋼一郎

『司馬遼太郎が発見した日本』(その1)「街道をゆく」を読み解く 松本健一著

国民国家といわれるのは、夏目漱石、吉川英治、そして司馬遼太郎の三人

1971年1月、『街道をゆく』は「湖西のみち」からスタート。「近江」琵琶湖の西側、大津を20キロほど北上する

冒頭の文からして、平易にして詩的な名文だ

☆☆☆

「近江」というこのあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、この国が好きである。

京や大和がモダン墓地のようなコンクリートの風景にコチコチに固められつつあるいま、近江の国はなお、雨の日は雨のふるさとであり、粉雪の降る日は川や湖までが粉雪のふるさとであるよう、においをのこしている。

歴史を自在に往還しつつ、感傷にあらぬ「詩心」を背骨のごとくつらぬくという「街道をゆく」の基本的姿勢は、その第一回「湖西のみち」(「甲州街道、長州路ほか」所収)の第一ページ第一行から明白であり、以後もついに二十五年間余、揺るがないのである。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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