日々思うこと

歴史学者ハラリ氏、新聞はAIに対抗する柱「人々の対話促す」2025/03/16 読売新聞

冨田鋼一郎

 イスラエルの著名な歴史学者で世界的ベストセラー作家のユヴァル・ノア・ハラリ氏が16日、読売新聞東京本社を訪問し、山口寿一社長と主にAI(人工知能)の脅威とAI時代の新聞の役割をめぐって対談した。

両者は、進化したAIは人類にとって制御不能な存在になりかねないとの見解で一致。ハラリ氏は、信頼に足る情報を提供する新聞はAIに対抗する柱になりうると強調した。

 ハラリ氏は冒頭、「AIを人間の道具と見なす人々がいるが、違う。地球に初めて出現した、非生物のエージェント(行為主体)だ。AIは自ら学習し、思考し、決断できる」と述べた。

 その上で、AIが銀行融資の適否の判断をしている例やイスラエルのパレスチナ自治区ガザでの戦闘でAIが攻撃の標的を提示している例などを挙げて、「行政や企業などで人間に取って代わって、判断をし始めている」と脅威を指摘。山口社長も「AIのもたらすリスクを人間が予測するのが難しいところが脅威だ」と応じた。

 ハラリ氏は更にAIが金融システムを管理する時代に入ったことに言及し、「いずれ為政者も銀行家も理解の及ばない、AIだけが理解する金融システムが生まれる。民主主義にとって極めて危険だ」と主張した。

 これを受けて山口社長は「米国のトランプ政権は技術競争や安全保障面での規制を嫌っている」と指摘。その上で、欧州連合(EU)が導入したAI法はリスク対処に際し、人間の尊厳を尊重している点を挙げた。ハラリ氏は、「AIが(SNS上で)人間を装ってユーザーに接することを禁止していないのは問題だ」と述べた。

 一方、虚構や幻想も作りだすAI時代を受けて、山口社長は「何が信頼に足る情報で、何がそうでないのか。その区別が重要だ。読売新聞は間違った報道は訂正する。それが読者の信頼を獲得すると考える」と見解を示した。

 ハラリ氏は17世紀以来の新聞の歴史を踏まえ、「近代の民主主義を可能にしたのは情報通信革命で、最初は新聞の登場だった」と説明。「新聞が真偽を見極めて信頼に足る情報を発信し、人々の対話を促すことが重要だ」と応じ、新聞の重要性で見解が一致した。 

⭕️椿落ちてきのふの雨をこぼしけり 蕪村

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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