読書逍遥第376回『サピエンス全史』ユバリ・ノア・ハラリ著
冨田鋼一郎
有秋小春
「パックス・ロマーナ」を打ち立てた初代皇帝アウグストス
「人間ならば、誰でも神々に願いたいと思うことのすべて、そして神々も人間に恵んでやりたいと思うであろうことのすべては、アウグストスが整備し、その継続までも保証してくれたのであった」(ヴァレリウス・パテルクロス)
しかし、栄枯盛衰が歴史の理(ことわり)ならば、ローマ帝国とて例外になりえない
西暦476年、西ローマ帝国が滅亡し、地中海は群雄割拠の時代へと入った
ローマ人による国際秩序としてもよい「パックス・ロマーナ」も過去になった。だが人間は、時代が変わろうと、願うことはやめない存在だ
人間にとっての根本的な願望の現実化を統治者に期待できなくなってしまっては、残されたのは神にすがることだけになる
それも、他の神との同居もOKだった多神教の神々ではなく、同居は断じてNOという一神教の神に
ローマ亡き後に地中海をはさんで向かい合ったのも、キリスト教とイスラム教という、一神教同士なのであった。