読書逍遥

読書逍遥第551回『ローマ亡き後の地中海世界』(その2) 海賊、そして海軍 塩野七生著

冨田鋼一郎

『ローマ亡き後の地中海世界』(その2) 海賊、そして海軍 塩野七生著

「パックス・ロマーナ」を打ち立てた初代皇帝アウグストス

「人間ならば、誰でも神々に願いたいと思うことのすべて、そして神々も人間に恵んでやりたいと思うであろうことのすべては、アウグストスが整備し、その継続までも保証してくれたのであった」(ヴァレリウス・パテルクロス)

しかし、栄枯盛衰が歴史の理(ことわり)ならば、ローマ帝国とて例外になりえない

西暦476年、西ローマ帝国が滅亡し、地中海は群雄割拠の時代へと入った

ローマ人による国際秩序としてもよい「パックス・ロマーナ」も過去になった。だが人間は、時代が変わろうと、願うことはやめない存在だ

人間にとっての根本的な願望の現実化を統治者に期待できなくなってしまっては、残されたのは神にすがることだけになる

それも、他の神との同居もOKだった多神教の神々ではなく、同居は断じてNOという一神教の神に

ローマ亡き後に地中海をはさんで向かい合ったのも、キリスト教とイスラム教という、一神教同士なのであった。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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