父の残した膨大な短歌ファイルを繰る(その9)
冨田鋼一郎
有秋小春
郭煕「山水訓」より
郭煕(1023-1085)(宋時代の画家)
春山淡冶にして笑ふが如く、
夏山は蒼翠にして滴るが如し。
秋山は明浄にして粧ふが如く、
冬山は惨憺として眠るが如し。
@@@@
[これきり]
これっきり これっきり
もうこれっきりですか
(山口百恵「横須賀ストーリー」)
○これきりに小道つきたり芹の中 蕪村
○路(みち)絶て香にせまり咲茨かな 蕪村
芹の中に茫然とたたずむ蕪村。茨が細道に覆いかぶさる
トゲがあるので掻き分けて進めず、立ちすくむと、茨の芳香が迫ってきた
字面はわかりやすくても、作者は一筋の道を迷わず突き進むのではなく、立ち尽くしてしまう
その態度は不徹底で、その心の中を知るのは容易でない
そもそも蕪村はどこに行こうとしていたのだろう?