読書逍遥第325回『日本の挽歌 失われゆく暮らしのかたち』(その1) 森本哲郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
[水の働き]
蒸留(ディスティレーション)と散布(ディストリビューション)
海水は液状のストレージシステム(太陽エネルギーを貯蔵)
海は地球の温度計だ。広大な渦を巻く青は惑星全体のエネルギー貯蔵庫として機能するため、その平均温度は地球に蓄えられている熱エネルギー量の尺度になる。
また、海は地球の気候の起伏の激しいエネルギー供給を平準化し、昼と夜、夏と冬の違いを平準化する巨大な緩衝装置だ。
これがもたらす安定は地球上の生命にとって極めて重要なもので、私たちすべてが依拠している繊細な生化学的機構が、気温の大幅な変動によって、簡単に凍ったり、暑さにやられたりする可能性を防ぎ、私たちを守っている。
しかしながら、温度は海というエンジンを駆動する影響力のある事柄のうちの1つに過ぎない。万物のうちでも目立たず、誰でも知っていて、全くありふれたもの、塩にも目を向けなければならない