読書逍遥第417回『疲れすぎて眠れぬ夜のために』(その1) 内田樹著
冨田鋼一郎
有秋小春
諸君の人生が生きていくだけの値打ちがあるものだと言うことを、諸君みずから感ずるように、みずから教育するがいい。
諸君が自己没入の病気(不幸の原因)をしっかり克服してしまったときに、いかなる種類の客観的な(対外的)興味が生じてくるかということは、諸君の性質や外的事情の自然な作用に一任するほかはない。
前もって、「切手の収集に没頭できたら、私はきっと幸福になるだろう」などと自分自身に言って聞かせて、切手収集に取りかかるようなことはよくない。なぜなら、その切手収集にまるっきり興味が持てなくなるようなことが起こらぬとも限らないから。
本当に興味を呼び得るもだけが諸君にとってなんらかの役に立ち得るのである。
だがしかし、諸君の自身の内にもぐり込まないようになるや否や、本当の客観的興味が出てくるものだということをある程度信じて間違いあるまい。