読書逍遥第511回『幸福論』(その1) バートランド・ラッセル著

『幸福論』(その1) バートランド・ラッセル著
20世紀を代表する常識人であるバートランド・ラッセルによる幸福論
結論は、幸福になるための秘訣は極めてシンプルなものであるということ 味わいながら読む
第一部で、「不幸をもたらす原因」として、バイロン風な不幸、競争、退屈と興奮、疲労、嫉妬、罪悪感、被害妄想、世論に対する恐怖を取り上げる
第二部で「幸福をもたらすもの」を、熱意、愛情、家庭、仕事、非個人的な興味、努力とあきらめを各章で論じていく
第一部があるから、第二部が活きてくる
「その人の情熱と興味が、彼自身の内部に向かってでなく、外側に向かって動いている限り、人間は幸福を達成することが必ずできる。
それゆえ、教育において、また自己を外部の世界に適応させるためのさまざまな企てにおいて、まず自己中心的な情熱はこれを避けるようにし、私たちの考えを私たち自身のうえにいつまでも釘づけにさせることを防ぐような愛情や興味を身に付けるように努力することこそ、私たちの任務でなければならない」
「諸君の人生が生きていくだけの値打ちがあるものだと言うことを、諸君みずから感ずるように、みずから教育するがいい」
「幸福な人間とは、自己と社会との統一融合の欠如を知らぬ人間に他ならない。
彼の人格は、自己の内で分裂することなくなく、また世界に対しても対立拮抗するものではない。
このような人間こそ、自らを宇宙の中の一員(シティズン)として感じ、宇宙の提供する展望を自由に享楽し、それが与える喜びと自由を享受する人間である。
なぜなら、そのような人間に、自分の後につづき来たるところの人々と全然別個な自分自身を感じるようなことは無いであろうから。
最も大きな歓喜の見い出されるのは、まさに、こうした生の流れとの深い本能的な融合においてである」
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「ロマンチスト」とは、自分の内部に閉じこもることなく、注意を自分の外側を向けて、この世(宇宙)の差し出すスペクタクルを意味のあるものとして感じることのできる人のこと