読書逍遥

読書逍遥第497回『すべての道は、ローマに通ず』(上下) (その3) 塩野七生著

冨田鋼一郎

『すべての道は、ローマに通ず』(上下) (その3) 塩野七生著

「ムセイオン」について

日本では「図書館」と訳されることの多いアレクサンドリアの「ムセイオン」だが、万巻(当時の書物は巻物)の書物が集まっていたところなので、この日本語訳は誤訳とは断定できない

だが、「ムセイオン」を直訳すれば、人間の創造活動を助けるミューズの女神の住む聖なる場所である

書物を集めれば、それを読みたい人も集まるので、図書館はごく自然に研究機関になっていく

そして、ギリシャ語の「ムセイオン」がラテン語になると「ムーゼウム」となり、芸術品や歴史上の遺物を集めて展示する場所の意味になって、現在の「ムゼオ・ヴァティカーノ」 (ヴァティカン美術館)や「ブリティッシュ・ミュージアム」(大英博物館)に受け継がれていく

だが、古代では「ムセイオン」と言えば研究所であり、最高学府であり、ギリシャのアテネにプラトンが設立した「アカデミア」が《人文科学のメッカ》ならば、エジプトのアレクサンドリアの「ムセイオン」は、天文学、地理学、医学の研究で有名であったところから、《自然科学分野のメッカ》と言えたのである

[ローマ市街略図(ローマ帝政期)]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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