読書逍遥第240回 『フェルメールと天才科学者』副題 17世紀オランダの「光と視覚」の革命
冨田鋼一郎
有秋小春
「ムセイオン」について
日本では「図書館」と訳されることの多いアレクサンドリアの「ムセイオン」だが、万巻(当時の書物は巻物)の書物が集まっていたところなので、この日本語訳は誤訳とは断定できない
だが、「ムセイオン」を直訳すれば、人間の創造活動を助けるミューズの女神の住む聖なる場所である
書物を集めれば、それを読みたい人も集まるので、図書館はごく自然に研究機関になっていく
そして、ギリシャ語の「ムセイオン」がラテン語になると「ムーゼウム」となり、芸術品や歴史上の遺物を集めて展示する場所の意味になって、現在の「ムゼオ・ヴァティカーノ」 (ヴァティカン美術館)や「ブリティッシュ・ミュージアム」(大英博物館)に受け継がれていく
だが、古代では「ムセイオン」と言えば研究所であり、最高学府であり、ギリシャのアテネにプラトンが設立した「アカデミア」が《人文科学のメッカ》ならば、エジプトのアレクサンドリアの「ムセイオン」は、天文学、地理学、医学の研究で有名であったところから、《自然科学分野のメッカ》と言えたのである