読書逍遥

読書逍遥第489回『ルネサンスとは何であったのか』(その10) 塩野七生著

冨田鋼一郎

『ルネサンスとは何であったのか』(その10) 塩野七生著

[メセナの語源]

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彫刻家ドナテッロ(1386-1466)のエピソード

「コシモ・ディ・メディテ(1389-1464)の遺言」

コシモは、ドナテッロが生活の心配をしないで創作に専念できるよう、豊かな収入が保障されるようフィレンツェ郊外の農園を贈ることを入れた。

ところが、ドナテッロはコシモの息子ピエロのところにやってきて、農園を返したいと言う。

なぜなら、風が吹いて家の屋根が吹き飛んでしまったとか、農家のために家畜を処理しなければならないとか、嵐になればなったで、ぶどう畑がめちゃめちゃになったのではないか、果樹園はどうなっているか、と心配で心配で、安心して創作に向かうところではないとのこと。

大笑いしたピエロは、農園の返却を承諾した。その代わり、メディチ銀行に作らせたドナテッロ名義の口座に、農園からあがる収益に見合うか、それより少し多い額を月ごとに計算して、毎月末に振り込むよう指示した。芸術家が今度こそ心から満足したのは言うまでもない。

「ドナテッロの遺言」
聖ロレンツォ教会にある恩を受けたコシモ・ディ・メディチの墓の側に葬ってほしい

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「ホラチウスの遺言」

ローマ帝国初代皇帝アウグストスの親友マエケナスは、詩人ヴゥルギリウス、ホラチウスのパトロンである

ホラチウスは、マエケナスの恩を感じて、マエケナスの墓の近くに葬ってほしいと遺言

→学芸の助成のことをマエケナスという これが「メセナ」(仏)の語源

⇨古代ギリシャ・ローマは、まるで血管の中を流れる血液のようにルネサンス人の中に生きている

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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