読書逍遥第226回 『モンゴル紀行』(その3) 街道をゆく5 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
[メセナの語源]
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彫刻家ドナテッロ(1386-1466)のエピソード
「コシモ・ディ・メディテ(1389-1464)の遺言」
コシモは、ドナテッロが生活の心配をしないで創作に専念できるよう、豊かな収入が保障されるようフィレンツェ郊外の農園を贈ることを入れた。
ところが、ドナテッロはコシモの息子ピエロのところにやってきて、農園を返したいと言う。
なぜなら、風が吹いて家の屋根が吹き飛んでしまったとか、農家のために家畜を処理しなければならないとか、嵐になればなったで、ぶどう畑がめちゃめちゃになったのではないか、果樹園はどうなっているか、と心配で心配で、安心して創作に向かうところではないとのこと。
大笑いしたピエロは、農園の返却を承諾した。その代わり、メディチ銀行に作らせたドナテッロ名義の口座に、農園からあがる収益に見合うか、それより少し多い額を月ごとに計算して、毎月末に振り込むよう指示した。芸術家が今度こそ心から満足したのは言うまでもない。
「ドナテッロの遺言」
聖ロレンツォ教会にある恩を受けたコシモ・ディ・メディチの墓の側に葬ってほしい
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「ホラチウスの遺言」
ローマ帝国初代皇帝アウグストスの親友マエケナスは、詩人ヴゥルギリウス、ホラチウスのパトロンである
ホラチウスは、マエケナスの恩を感じて、マエケナスの墓の近くに葬ってほしいと遺言
→学芸の助成のことをマエケナスという これが「メセナ」(仏)の語源
⇨古代ギリシャ・ローマは、まるで血管の中を流れる血液のようにルネサンス人の中に生きている