読書逍遥第162回 『はるかなる道』 1992刊森本哲郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
「読者に」の末尾に、ローマ・ルネサンスの人々と自分の同時代性について気づく
私(著者)もルネサンス人と同じように古代ローマに回帰しなければならない
ここらに多くの読者を惹きつける秘密がある
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勉強し考え書くことを通して、ルネサンス時代に生きる歳月が長くなるにつれて、私自身もあの時代に生きた人でもあるかのように考えてくる。
しかも私は、西欧が打ち立てた価値観が崩壊しつつある時代に生きるはめになった。
中世を支配してきたキリスト教的な価値観の崩壊に立ち会ったルネサンス人と、近代を支配してきた西欧的価値観の崩壊に立ち会っている私。
ならば、彼らが新しい価値観を創り上げるためにまず回帰した先が古代ローマなのだから、私も回帰し、それが何であったかを冷徹に知ることが先決すると思ったのだった。
というわけで、今はローマを書いている。ローマ人に関心を持つのは、以上のような理由で私には、実に自然な選択なのである。
[帝政ローマ時代から中世、ルネサンス期までの貨幣の推移]