読書逍遥

読書逍遥第482回『ルネサンスとは何であったのか』(その3) 塩野七生著

冨田鋼一郎

『ルネサンスとは何であったのか』(その3) 塩野七生著

「読者に」の末尾に、ローマ・ルネサンスの人々と自分の同時代性について気づく

私(著者)もルネサンス人と同じように古代ローマに回帰しなければならない

ここらに多くの読者を惹きつける秘密がある

@@@@

勉強し考え書くことを通して、ルネサンス時代に生きる歳月が長くなるにつれて、私自身もあの時代に生きた人でもあるかのように考えてくる。

しかも私は、西欧が打ち立てた価値観が崩壊しつつある時代に生きるはめになった。

中世を支配してきたキリスト教的な価値観の崩壊に立ち会ったルネサンス人と、近代を支配してきた西欧的価値観の崩壊に立ち会っている私。

ならば、彼らが新しい価値観を創り上げるためにまず回帰した先が古代ローマなのだから、私も回帰し、それが何であったかを冷徹に知ることが先決すると思ったのだった。

というわけで、今はローマを書いている。ローマ人に関心を持つのは、以上のような理由で私には、実に自然な選択なのである。

[帝政ローマ時代から中世、ルネサンス期までの貨幣の推移]

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました