読書逍遥第395回『コンスタンチノープルの陥落』(その2) 塩野七生著
冨田鋼一郎
有秋小春
「日本的民主主義は、創造の芽をつみやすい」
日本的民主主義と呼んでいるものは、欧米のそれに比較するとかなり特殊なものである。
欧米の民主主義は、個人主義の確立を前提になりたっている。
日本的民主主義の欠点は、「創造性の芽をつむ」ことである。
創造性と全体のバランスは相容れない。
やむにやまれぬ動きとして個人の創造性は現れてくるし、言ってみれば、ゴツゴツとして、あちこちにぶつかるものである。
創造的なものが生まれてくるときは周囲のものは苦労することが多い。しかし、「個人」に対する信頼感と、各個人も個々の人生を生きているという事実によって、欧米においては「創造性」を育てる土壌ができている。
これに対して、日本の民主主義は、「全体のバランス」の維持に心が向きすぎて、ゴツゴツした創造性を早くから「円く収めよう」としすぎるために、その芽をつんでしまうのである。
創造性の弱い人は、創造に使用すべき時間とエネルギーをもてあましているので、「民主主義」のためにそれを使用しているつもりで、創造的な人の足をひっぱることに全力を尽くしているときもある。
日本的民主主義の功罪について詳細に検討する必要があると思われる。