読書逍遥

読書逍遥第478回『こころの処方箋』(その3) 河合隼雄著

冨田鋼一郎

『こころの処方箋』(その3) 河合隼雄著

「日本的民主主義は、創造の芽をつみやすい」

日本的民主主義と呼んでいるものは、欧米のそれに比較するとかなり特殊なものである。

欧米の民主主義は、個人主義の確立を前提になりたっている。

日本的民主主義の欠点は、「創造性の芽をつむ」ことである。

創造性と全体のバランスは相容れない。
やむにやまれぬ動きとして個人の創造性は現れてくるし、言ってみれば、ゴツゴツとして、あちこちにぶつかるものである。

創造的なものが生まれてくるときは周囲のものは苦労することが多い。しかし、「個人」に対する信頼感と、各個人も個々の人生を生きているという事実によって、欧米においては「創造性」を育てる土壌ができている。

これに対して、日本の民主主義は、「全体のバランス」の維持に心が向きすぎて、ゴツゴツした創造性を早くから「円く収めよう」としすぎるために、その芽をつんでしまうのである。

創造性の弱い人は、創造に使用すべき時間とエネルギーをもてあましているので、「民主主義」のためにそれを使用しているつもりで、創造的な人の足をひっぱることに全力を尽くしているときもある。

日本的民主主義の功罪について詳細に検討する必要があると思われる。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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